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(C) TEGAKI YUZEN - NAKAKO
 
 
 
染めたい生地の種類と大きさを考え、ロール紙等を使い、模様を鉛筆で描いた後、サインペンなどで濃く描く。
 
◆作家コメント◆
描きたい画とその構成を図りながら、最後の一つの線を求めるために、いくつもの線を鉛筆で描いては消し、消しては描き、納得のいく線を探します。
また、染め上がりのイメージを友禅染で表現するのにふさわしい模様の取り合わせも考えます。
デッサンしたもの、デッサンしたものをデザイン化したもの、古典柄などご注文のイメージ、或いは作家自身の描きたいものを描きます。
 
 
   
 
出来上がった図案を白生地に写す。
 
◆作家コメント◆
ガラスの下からライトを当て、下絵の上に白生地を置き、新花(青花※)で筆を使って描き写します。新花は蒸すと消える染料です。
 
※「青花」=ツユクサ科の大帽子花(オオボウシバナ)の花汁を絞り、和紙に何度も塗っては天日で乾かす作業を繰り返したもので生産量も少なく貴重品です。この青花紙を水に浸すと美しい青色が溶け出し、その液を使って友禅の下絵描き、陶器の絵付けなどに使われています。この液は水に遭うとすぐに流れて跡を残しません。
 
 
 
   
 
下絵のとおりに糸目糊(※1)で筒描をしていく。
この技術は友禅染の工程でも最も難しいもので、「糸目糊」または「ゴム糊」を使う。
「糊」は仕上がるまでに水分を含むと糊の部分がのびて、線が太くなる場合がある。
「ゴム」は細い線が描きやすいものの、染料が糸目の外に滲みやすく、ゴムを定着させるのに化学薬品を使うため換気に注意する。また、ゴムを洗い落とすのにドライクリーニングが必要。
 
◆作家コメント◆
私は昔ながらの「糸目糊」を主として制作しております。
糸目糊を使って下絵をなぞって筒描きします。
付随作業:糸目糊の糊は糯米と亜鉛末を混ぜ、お湯で撹拌し糸目糊の固さを調整して、その糊を筒に入れます。これに先金を付けて指で押し出しながら筒描します。
筒描の準備ができたら生地を伸子張り(※2)をします。
伸子は竹を縦に割ったもので、大張り伸子を襷掛け、小張り伸子で横に掛け、生地のしわやたるみを調整します。
 
※1 糸のように引きながら糊を置いていくので糸目糊置と言われます。この糸目は後の工程で、模様から染料が滲みださないための防染の役目を果たします。 一通りの作業を終えた後、水元(糊を水で洗い流す作業)をすることで糸目糊が落ち、生地の白い部分が残ります。
※2 伸子とは布巾を一定に保つ道具。
 
 
 
   
 
生地の裏から霧を吹いて乾かす。
 
◆作家コメント◆
糸目糊を生地に馴染ませるためにこの作業が必要です。
   
 
 
 
   
 
色の定着のために欠かせない工程。
「ふのり」という海藻を煮て、こし、地入れ液を作り、刷毛で生地にふのりを入れる。 (模様の部分だけに豆汁を挿す場合もある。)
 
◆作家コメント◆
裏からも空刷毛をし、よく生地に馴染ませ余分な水分を拭き取り乾かします。
地入れ液は、刷毛を使って生地に入れますが、糸目がのびてしまわないよう素早く乾かします。
 
※この作業は染料が糸目の外に滲みだしにくくなること、絹の持つ蛋白とで蒸しの過熱処理により生地に染料がよく定着する、発色が良くなるなどの効果があります。
 
 
 
   
 
染料を筆に含ませ、糸目糊から滲みださないように気をつけて色を挿す(※)。
 
◆作家コメント◆
筆は彩色筆、片羽刷毛、平刷毛、丸刷毛などを使い、筆以外にも多くの道具を使用します。

染料には滲みを防ぐ助剤で「なきどめ」を加え、色を挿すのに、ムラができないように注意します。
最初に筆を下ろした色の周りはすぐに乾き始め、続けて色を挿してもムラが生じるので、注意が必要です。

現在はレベリングオイルを使ってムラを目立たなくさせる助剤があります。
色は基本色を用いて、挿したい色は基本色を混ぜながら創ります。
一色ずつ色を創っては試し、納得のいく色を創ります。

友禅では鮮やかな色を落ち着かせるのに黒を足すのなく、補色を混ぜて色を錆びさせます。
濡れている時と乾いた時では色が異なりますので、色挿しには時間を要します。
また、熱を利用して乾かす場合、熱を当てたほうに色が集まり濃くなります。

友禅染は絵画などとは異なり、工芸としての特徴がここにもあります。

色挿しの時、染料が糸目の外に滲みでることを「色がなく」と言います。
友禅染の特徴は色のぼかしにもあります。
ぼかした色の長さのことを「ぼかし足」と言い、「ぼかし足が短い」「ぼかし足が長い」などと呼びます。
関東では、下絵・色挿し・仕上げなどを一手に出来る人を模様師と呼びます。
 
 
 
   
 
染料を生地に定着させるため色挿しした反物を蒸す。
 
◆作家コメント◆  
模様部分に白黒の新聞紙を巻いて、約40分から50分蒸し器で蒸気に当てます。
取り出す際は蒸し器の蓋についた水滴が生地に落ちないよう十分に気を付けます。
蒸気の熱で火傷しないように配慮しながら取り出し、糊が柔らかくなって熱いうちに巻いた新聞紙を剥がします。
蒸すことで発色が良くなります。
 
付随作業:新聞紙の仕分けもします。
カラーページは使えません。色素が生地に映ってしまう場合があります。
 
※模様のところを伏せる前に一度蒸すことを「空蒸し」と言います。
蒸すことで色をよく発色させ、色を生地に定着させます。
 
 
 
   
 
模様の上を糊で覆うことを言い、糊伏せまたは単に伏せると言う。

◆作家コメント◆
糸目にそって伏せ糊し、伏せた部分には引き粉をかけます。
糊が空気を含まないように注意が必要で、空気を含んだ部分が割れてしまうと地染の際に、染料が模様部分に染み込む原因になります。
伏せ糊の水分が多すぎると地染めする際に地色が模様部分に染み入り込んできたり、伏せ糊が固すぎても作業がしづらくなります。
 
湿度により乾き具合が異なりますが、乾くまで次の工程ができません。
伏せ糊は糸目糊より糠(ぬか)が多いものを使い、糸目糊と粘り具合が異なります。
 
 
 
 
再び地入れを行う。
 
 
 
   
 
刷毛を使って生地全体を染める。
 
◆作家コメント◆
地色とは生地全体のもっとも範囲の広い部分を染めた部分を言います。
一反の着物を染める場合、約反物が12mあり反物を張り木で張って刷毛で染めます。
 
専門の刷毛職人がおられるほど難しい技術です。
着物と帯は専門の業者に外注しますが、それ以外は自分で引染します。
ムラにならないよう注意し、生地の端から染めていきます。
表からだけでなく裏からも模様部分をさけつつ、色が均一になるよう整えます。
 
 
 
   
 
最後の蒸しを行い、色を定着させる。
 
◆作家コメント◆
模様部分に白黒の新聞紙を当て、地色が濃い場合は模様部分がほかの生地に映らないよう厚めの紙を当ててから蒸します。
約40分から50分、蒸し器で蒸気にあてます。
 
 
 
   
 
「友禅流し」のことを言う。生地に着いた余分な染料と糊を洗い流し、色を引き締める。
  
◆作家コメント◆
洗う前に溜めた水に氷酢酸を少量加えて色留めをします。
洗面ボールや流し台で行う場合は、水を何度も換えて糊や不純物をきれいに落とします。
 
関東では「水元」と呼び、関西では「洗い」と呼びます。
 
※昔、川で反物を広げて洗っている様子をご覧になられたかたもいらっしゃると思います。この作業のことです。

 
 
 
   
 
専門の業者に外注する。
 
◆作家コメント◆
水元した生地を乾燥させ蒸気の出る器械でシワをのばし生地巾を一定にします。
ふのりがとれ、ふんわりとした絹の柔らかさがでます。
 
 
 
   
 
彩色=友禅染に必ずしも必要ではない。
 
◆作家コメント◆
葉の葉脈を顔料の線で加筆するなどの場合があります。
顔料は生地に接着させるための助剤を使うため生地が固くなってしまう特徴があります。
 
金銀加飾=金・銀線、金・銀砂子、箔などで加工。
 
◆作家コメント◆
美しさを強調するために使います。また金・銀加飾も必要のない場合もあります。
これらを巧く組合せし、イメージのものに近づけます。
 
 
 
   
 
14の工程一つ一つを丹精込めて行い、友禅染完成。
用途によりガード加工を外注する。
 
◆作家コメント◆
ガード加工は、友禅染を永くご愛用いただくために専門業者で処理後、お渡しします。
汚れに強く、お手入れが簡単、美しさが長持ちする、という特長があります。
   
 
     
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